イジワル上司に甘く捕獲されました
瀬尾さんが頼んでくれたデリバリーは。

ピザとパスタにポテトといった私の好きなものばかり。

心配事がなくなった私が、空腹を伝えたせいもあったからかもしれないけれど。

元々は食欲がないのではと心配してコンビニでおにぎりを買ってきてくれてはいたのだけれど。

だけど。
悩みはなくなっても新たな緊張が加わってしまって、私はなかなか食べられなかった。

味もよくわからなかった。

だって。

食べている間、ずっと瀬尾さんは自分も食べつつ、私をじっと見つめてくるから。

視線が気になって、本当に味どころではなくなってしまっていた。

二人で食事をすることは初めてではないのに。

恋人、になってからの初めての食事は。

何処か恥ずかしくて、くすぐったくて。

食べながらも、ふとした瞬間に感じる優しい視線に。

私の体温は上がる一方だった。

そんな甘い時間のなかで。

私は気になることを聞いた。

「……瀬尾さん、あの、私達のことって……」

「付き合ってること?」

勘のいい瀬尾さんは私が言いたいことをすぐに理解してくれたようで、自分から話してくれた。

「うーん、別に俺はバレたらバレたでいいんじゃないかと思うけど。
転勤とか絡んできたらややこしいかもしれないけどさ。
むしろ俺としてはバラしたいくらい。
美羽に変なヤツが寄ってきたら嫌だし」

鼻に皺を寄せながら瀬尾さんが言う。






< 113 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop