イジワル上司に甘く捕獲されました
「改めて、おめでとう!
良かったわね!」

綺麗に口紅が塗られた唇をニッコリさせて橘さんが言う。

「片山部長から聞いた時はビックリしたけれど。
本当に素敵なチャンスよ。
今までこういうことは男性に抜擢されることが多かったわけだし。
けれど今回のことでますます我が社の女性登用も増えるんじゃないかしら、良いことだわ!」

自他共に認める仕事好きの城田さんは満足そうに頷く。

「あ、ありがとうございます……。
でも私に務まるかどうか、心配で、……」

私の返答に艶々の肩で揃えられた黒髪を掻きあげながら苦笑する城田さん。

「何言ってるの。
私がしっかり育てたんだから、自信をもって行ってらっしゃいよ。
片山部長だって橘さんならできるって見越して判断したのよ、私も片山部長の見立ては正しいと思うわ。
寂しくはなるけれど……たまには近況報告してね?」

優しい城田さんの言葉に涙が浮かびそうになって。

「そうそう、札幌支店って私の同期がいるのよ」

ふと思い出したように言う城田さん。

「えっ?
どんな方なんですか?」

「すっごく美人よ~。
仕事もデキるし、判断も早いし。
同期の中でも一目置かれてたの。
本人は嫌がるんだけど、面倒見もいいし。
無愛想なんだけど、何故だか上司には可愛がられているのよねぇ。
私達のなかでも一番の出世頭ね」

ニヤッと笑う城田さん。

支店でも、かなりの仕事がデキる美人と誉れが高い城田さんが褒める人ってどんな人なんだろうと俄然興味が湧く。

「そういえば、橘さんの指導担当っていうかそのプロジェクトチームのリーダーになる人って誰?」

「ええと……ちょっと待ってください」

鞄からクリアファイルを取り出す私。

片山部長に札幌支店に関連する資料をいただいたのだ。

「……瀬尾潤さん、です」

「それ、その人!」

ぴしっと薄いピンクのフレンチネイルを施した爪でクリアファイルを指し示す城田さん。

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