イジワル上司に甘く捕獲されました
「ママに瀬尾さんのこと話すの?」

不意に真央に聞かれて。

「うん、話すよ。
……っていうか……実は潤さんが既に電話してくれたの」

「ええっ、何それっ、聞いてないしっ」

「……言ってないもん」

ズルイッと頬を膨らませる真央に苦笑しながら私は説明する。

「……何となく、別に他意はなく、両親に潤さんのこと話していい?って聞いたの。
そしたら、本来ならご挨拶に行かなきゃいけないのだけど、今すぐは行けそうにないからせめて電話をしてご挨拶をしたいって言われて」

「何、何っ、何て言ったの?」

「どっちが?」

「どっちもっ」

完全に野次馬のように目をキラキラさせて聞く真央。

「……型通りに……け、結婚を前提にお付き合いをさせていただいてます、また休みを取って改めてご挨拶に伺いますって……」

「うっそ、素敵!
美羽ちゃん、結婚するのねっ。
で、で、パパとママは?
何て返事したのっ?」

「……ビックリしてるみたいだったけど……娘をよろしくお願いします、お待ちしていますって」

それ言いそう……と頷く真央。

「で、でも、別にプロポーズされたわけじゃないからっ、まだまだっ、結婚とか言われてないし」

「……何焦ってるのよ、わかってるよ、美羽ちゃん。
これから先、でしょ?
でも、もうプロポーズされたようなもんじゃない。
いいなぁ、イケメンの旦那様」

「……翔くんも充分イケメンよ」

じっと真央を見つめると、真央は知ってる、と明るく笑って。

「でも、ほら、あの人はどうなったの?
峰岸さんだっけ?
瀬尾さんのこと、まだ好きなんでしょ?
……なのに何で瀬尾さんと美羽ちゃんが上手くいくようにフォローしてくれたんだろうね?」

「……うん」

そう。

あの日。

私が皆川さん達と面談を受けて。

精神的に打ちのめされていた日。

地下の資料室に来て直帰を促してくれたことも。

後で潤さんが話してくれたことだけど。

あの日、潤さんが私を追いかけるように帰れたことも。

峰岸さんが仕事を引き受けてくれたからだそうだ。


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