イジワル上司に甘く捕獲されました
峰岸さんの本心はわからない。

峰岸さんが今も潤さんを想っているのかどうか。

ただ。

歓迎会の時。

峰岸さんが見せた切ない表情と吐露していた想いはとても深くて。

その気持ちに私は何も言えないし……言うつもりもない。

誰かを想うこと、それは自由だから。

だけど。

仕事に対しても恋敵の筈の私に対しても、正々堂々とした態度を貫いていた峰岸さんに私は好感すら抱くようになっていた。

峰岸さんがどう思っているかはわからないけれど……やっぱり峰岸さんは同じ女性としてとても魅力的な人に変わりはないから。

誰に、いつ、何処で恋をするかは誰にもわからない。

皆、恋をしようと思ってしているわけではないから。

どうせ恋をするなら幸せな恋をしたいと誰もが思うこと。

相手に気持ちを受け入れてもらいたいと切実に願う。

だけど。

自分が好きになった相手に、必ずしも同じだけの想いを返してもらえるわけはなく。

受け入れてもらえるわけではなく。

一方通行になってしまったり、すれ違ってしまったり、悲しい結果になってしまうことは幾らでもある。

あの日、あの時、ほんの少しのタイミングで何もかもが変わってしまう繊細さと揺るがない強さも秘めていて。

恋の形は本当にたくさんあって。

だからこそ、恋は人を幸せにするけれど、時に残酷でもある。

どんなに涙を流しても、胸が張り裂けそうなくらい、もう笑えないくらいに悲しくても誰にも救ってもらえない。

そこから自分で立ち上がるしかないから。

だけど。

それでも。

恋を知る前に戻りたいとは思わない。

……それが恋なんだろうと思う。



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