イジワル上司に甘く捕獲されました
私の質問を肯定するかの様に潤さんは柔らかく微笑んで。

「……俺達のため、だろ?」

再び私をギュッと抱きしめてくれた。

「だけどっ。
そんな、そんな個人的な人事なんて……っ」

聞いたことがない。

あり得ない。

「そう、だから、最後まで確信がもてなかったから……美羽に言えなかったんだ。
けど……峰岸に出来るだけ早く後任を任せて。
尚樹にフォローを頼んで。
俺なりに皆川さんや色々な人事関係に頼んでこっちに異動させてもらったんだ。
異動の時期だったし、尚更。
……俺がしたい仕事はこっちにもあるから、さ」

潤さんの気持ちに、言葉が出ない。

アッサリと何でもないことのように潤さんは言うけれど。

そんなわけない。

この会社でそんな簡単に一人の希望の人事はかなわない。

色々な根回しやそれに伴う実力や評価、業績といった目に見える結果を必要とされる。

けれど彼は。

それをやってのけてくれた。

……私のために。

日々の業務だけでも激務なのに。

上乗せで努力してくれた。

……私のために。

それはどれ程大変だっただろう。

……全然知らなかった。

私は。

それほど彼に想ってもらって大切にしてもらっていた。

そう。

潤さんはいつもそうだった。

目に見えない場所で。

私を包んでくれていた。

だけど私は。

そんな彼の想いに気付かずに。

愛想をつかされたのか、嫌われたのかとか。

表面しか見ないで、勝手に不安になって寂しさに囚われて。

どれだけ子どもだったんだろう。

改めて自分が情けなくなる。


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