イジワル上司に甘く捕獲されました
「橘美羽さん。
俺と結婚してくれませんか?」

私の腰に緩く両腕を回して。

イタズラっぽく私を覗きこむ潤さん。

その顔は心なしか赤くて。

私は溢れる涙を拭うことすらできずに。

左手をただ見つめて。

「……はいっ……」

返事をして彼を見上げた。

どこまでも澄んだ綺麗な瞳の潤さんは。

「愛してる、美羽」

と、私の身体に染み渡るような優しい声でもう一度囁いて。

私の唇に長いキスをした。

何度も優しい啄むようなキスを繰り返して。

私の目から溢れる涙をキスで拭って。

私を胸にギュッと閉じ込める。

嬉しすぎて私達の横を通り過ぎていく人の視線も気にならないくらいに。

……普段の私なら絶対にあり得ないけれど。

それから暫く抱き合って。

「じゃ、行こうか」

潤さんは明るく言って、私の手を取る。

「い、行く?」

先程の甘い雰囲気とはまた違う雰囲気に戸惑う私に。

潤さんはイタズラっぽく笑う。

「美羽のご実家に」

「い、家に?
な、何で、我が家に?
いきなり?」

慌てふためく私に落着きはらってニヤリとする潤さん。

「いきなりじゃない。
ちゃんと美羽のご両親には連絡してあるから」

「いっ、いつの間に……!」

「うーん、数日前?」

しれっと言い放つ潤さん。

「き、聞いてないっっ!」

……ふ、二人ともここ数日、何にも私に言ってこなかったのに……!

「内緒にしてもらっていたからね。
食事をご一緒にってお誘いいただいたから楽しみだな。
あ、でも俺の荷物、駅のコインロッカーに入れてあるからそれを取ってからな」

ドキドキするくらいの眩しい笑顔。

でもこの人……やっぱり策士だ。

仕事ができる人って皆、こんな感じなの?

アワアワしている私をチラリと見て。

「大丈夫、今頃真央ちゃんも帰って来てくれているから」

とどめのビックリを落下させてくれた。

……何なの、もう、皆。

驚いて目を丸くする私を見てクスクス笑いながら。

「じゃあ、帰ろうか」

とびきり甘い甘い笑顔で私の肩を抱き寄せる彼に。

やっぱり私は一生かなわない……。




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