イジワル上司に甘く捕獲されました
私の背後から聞こえてきた低い、馬鹿にしたような声。

「あれ、潤。
いたの?」

私を挟んで向かい合う二人。

「橘、桔梗は無視していいからさっさと席に戻れ」

私を一瞥して桔梗さんに向き直る瀬尾さん。

「無視ってヒドイな、潤。
折角美羽ちゃんと楽しく話していたのに。
スゴいぞ、美羽ちゃん、お前と面談したのに目がハートになってないんだぞ」

意味のわからない報告をする桔梗さんを冷たく睨んで。

「……桔梗、お前役職者なんだから、きちんと社内にいる時くらい女子を苗字で呼べ」

これまた冷たく言い放つ瀬尾さん。

「ハイハイ、本当に潤は厳しいな。
あ、そうそう、潤。
頼みがあるんだけどさ」

急に猫撫声になった桔梗さんに。

「俺はない」

とバッサリ言い切る瀬尾さん。

「そう言うなよ。
確か潤、トランクルームまだスペース余裕あったよな?
俺の荷物、少し置いてくれよ」

「無理、処分しろ。
もしくは有料で何処か借りろ」

「何で!
俺のトランクルームとお前のトランクルーム、近いんだからいいじゃん」

押し問答のようなことを私の頭上で繰り広げる二人。

……さっさと席に戻れば良かった、と後悔し始めた時。

ひとつの疑問がわいた。

……桔梗さん、自分のトランクルームと瀬尾さんのトランクルームが近いって言ってたよね、今。

トランクルーム、ってまさか自宅マンションの地下にあるトランクルーム?




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