イジワル上司に甘く捕獲されました
「お、瀬尾っ。
お疲れ」

桔梗さんがグラスを上げる。

そして。

グラスの中身を飲み干して。

「……あれ?」

と一言。

「これ、ウーロン茶?」

キョトンとする桔梗さんに、藤井さんが焦った表情で私が飲み干したグラスの匂いを嗅ぐ。

「ちょっ……もしかして、桔梗さん、ウーロンハイ飲んでたんですか?」

「うん」

「やだ、どうしよう、橘さんが飲んだの、ウーロン茶じゃなくて桔梗さんのお酒だったみたい!」

慌てる藤井さん。

当の私は、そういえば何だか身体がフワフワして顔が熱いなぁと呑気に思っていた。

「ええっ、ゴメンナサイッ。
私、てっきり……美羽ちゃんっ、大丈夫?」

焦り声の金子さん。

「だ、大丈夫ですよ~」

ニコッと笑う私に深刻な表情を向ける三人。

私の席に向かって歩いてくるしかめ面の瀬尾さん。

それが私が覚えている最後の景色だった。
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