なんとなく君に恋をして

ドヤ顔で言われても、通じてなかったものはしょうがない。はっきりと確認してこなかったのも悪いが、私もどこか意固地になっていたところがあるのは確かだ。
そりゃ確かに、何度も愛されてると錯覚するような瞬間はあったし、毎日のように“待ってる”と笑顔で言われれば僅かながら期待している自分もいた。それでも──

「“なんとなく好き”で、結婚しちゃってもいいの?」

この期に及んで念入りな確認をする私は、どうやら自分でも呆れるくらいに卑屈な人間で。
どんな言葉を聞いても、簡単には不安がぬぐい去れない程には、目の前の男に惚れているらしい。

「“なんとなく”で始めて、どうしようもなくハマっちゃうこともあるって、さっき説明したばっかりだけど?」

これが最後とばかりに、決定的な言葉を口にした哲生は、一気にたたみ掛ける。
普段はのんびりしているくせに、こういう時だけはせっかちだ。

「返事は?」
「ちょっと、待って。少し考えさせて」

返事なんて、どんなに考えたって決まっているはすなのに。往生際の悪い私に、哲生は今度は溜息ではなく、小さな笑いを漏らした。

「分かった、特別に一晩あげる。Yesなら、明日あのテーブルに朝食を並べて」
「NOなら?」
「もういちど“なんとなく”からやり直そう」

そんなのズルい、というひと言は言えなかった。哲生が私の肩を抱き寄せて、唇をキスで塞いでしまったからだ。

いつか感じたような、手放しがたい温もりに包まれて。
流されるままに、明日あのテーブルに並べる朝食メニューを思い浮かべている私は。

きっと、ほんとうは微塵も後悔していないのだろう。


“なんとなく”君に恋したことを。


【Fin】



最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

もうすぐ、春。
迷いながら、なんとなくで選んだ道でも、その道で頑張っていれば、きっといいことが沢山あるんじゃないかなあと。
そんなメッセージを込めてお届けしました。

初めて企画に参加させていただいたのですが、お話の出来はともかく、楽しく書けました。
気になった方は、ぜひキーワード「食卓企画」をクリックしてみてくださいね。
豪華メンバー(私以外)なので、私も読むのが楽しみです♪

それでは、皆様、また会う日まで。

2017.2.28
木崎湖子
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