Spice‼︎
決心
風間の部屋で夜が明けた。

梨花は結局風間に抱かれている。

昼間の桐原の余韻をあの頃のように風間に上書きして欲しかった。

「思うんだけど…桐原部長に抱かれると
風間くんに抱かれたくなるみたい。」

「そんな事じゃダメですよ。

僕はもう梨花さんのオモチャではありませんから。」

「そうだよね。」

梨花は風間の胸から身体を離した。

「帰らなきゃ。

夜が明けちゃった。」

「朝ごはん食べて行きませんか?

今日はお休みだし…ここでゆっくりこれからの事を考えてください。」

「風間くんの腕の中で?」

「そうです。」

梨花は久しぶりに風間の前で笑顔になった。

風間はそれを見て少しだけホッとする。

梨花はもっと堂々としていた。

男を二股かけてそれを楽しんでたくらい
男に振り回されないで逞しく我が道を生きてた。

風間はそんな梨花が好きだった。

「梨花さんは桐原さんを愛して弱くなりましたね。

弱い梨花さんも魅力的ではあるけど…

でも僕はこれ以上梨花さんの悲しい顔は見たく無いんです。」

風間にそう言われて梨花は決断する。

「上海…やっぱり行くべきだよね。」

「僕は…そう思います。」

桐原みたいな男が梨花を幸せにするとは到底思えなかった。

梨花と離れるのは堪え難いけれど
桐原はまた梨花を利用するかもしれない。

そう思うと梨花は上海に行くべきだと風間は思った。

「ありがとう…風間くんに会って良かった。」

梨花は帰り際、ずっと返さずに持っていた風間の部屋のカードキーを返した。

そして風間も梨花の部屋の鍵を返した。



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