Spice‼︎
「上海に行く話があるの。

私は行こうと思ってる。

でも桐原部長には行くなって言われて…。」

「上海の仕事はウチの社の最大のプロジェクトですからね。

そうですか…土方さんは梨花さんを連れて行くって言いましたか。」

風間はすこし寂しそうに見えた。

そして起き上がると梨花のためにお茶を淹れた。

「夜だからコーヒーじゃなくてハーブティーにしました。」

透明なカップの中に可愛らしい白い花が浮いている。

「風間くんは…優しくていい旦那さんになるね。
奥さんになる人は幸せだよね。」

「梨花さんが立候補してもいいんですけどね。」

風間は前より少し余裕があるというか
大人の魅力が増したような気がする。

仕事で苦労しているのか薄く眉間のシワが出来た。

梨花はそのオデコを軽く押してみる。

「何するんですか?」

風間は急に触られて少し動揺している。

「ここにシワが出来てる。」

「そうですか?」

「うん。」

風間はその梨花の指を右手で掴むと
自分の方に引き寄せた。

「今夜、オモチャが必要ですか?」

梨花は首を振った。

「そういうつもりで来たんじゃないの。」

「じゃあどういうつもりで来たんです?

一人暮らしの男の部屋に勝手に入ってベッドに寝てるなんて…

抱いてくれって言ってるようなモノです。」

そして風間は梨花にキスをする。

「風間くんは上海に行くべきだと思う?」

「桐原さんを選ぶくらいなら上海に行って欲しいと思います。
でも僕を選ぶなら行かないで欲しい。

僕はやっぱり梨花さんを誰にも渡したくないんです。」

梨花の胸は押しつぶされそうなほど苦しくなった。

結局まだ風間の事も好きで…
桐原とも別れたくなくて
優柔不断で何も決められない自分に梨花は心底嫌気がさしていた。



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