Spice‼︎
桐原は梨花の気持ちがさっぱりわからなかった。

めずらしく誘いに乗ったと思ったら
その後はいつもパッタリ連絡を断ってしまう。

梨花の部屋まで行ってみたが
梨花は帰ってないようだった。

ヒロのバーに顔を出すとヒロがびっくりした顔で桐原を迎えてくれた。

「久しぶりですね。」

「梨花はまだ来てる?」

「えぇ…まぁ。」

桐原はヒロの対応からまだ梨花との間に何かあるような感じがした。

「バーテンさんはまだ梨花と個人的に会ってますか?」

「え?…まぁ。この前少しだけ…

でも梨花さんは今、風間くんを離すまいと必死ですよ。」

「梨花が?逆じゃなくて?」

「風間くんに別れを切り出されたみたいです。

なんでも…会社に有益なお見合いがあるんだかで…

そしたら急に風間くんへの気持ちが大きくなったみたいで…

女ってわかんないですね?

俺はてっきり梨花は桐原さんの事が好きなんだと思ってました。」

桐原はその話を聞いて怒るどころか笑っていた。

「アイツは全く…」

ヒロはそれを見て桐原の懐の広さを知る。

自分は梨花の態度に腹を立てていたのに…

「風間くんと梨花の事、許すんですか?」

「梨花は寂しいだけでしょう?

捨てる事は出来ても捨てられるのは耐えられない。

冷めてるようでいつも愛情に飢えてる。

風間は唯一梨花に愛情を与え続けて来た男だから。

俺は梨花にとって見ての通り酷い男だし…

バーテンさんには他に好きな人が居る。

梨花にとって貴重なのは風間くんみたいな男だから。

梨花が引き止める気持ちはわかりますよ。」

ヒロはそれを聞いて妙に納得してしまう。

「梨花が貴方と離れられない気持ちがなんとなくわかりました。」

そして桐原はその夜、閉店までヒロのバーで飲んだが
結局、梨花は現れなかった。
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