Spice‼︎
赤いシルシ
ドアが開いて土方が入ると
梨花は泣き崩れていた。

「大丈夫か?」

土方は梨花を抱きしめる。

「何やってんだよ?

お前みたいな女がこんなに泣くなんて…
らしくないだろ?」

土方は梨花をソファに座らせて肩を抱いた。

「社長の隠し子のこと…本気なんだな。」

「そうじゃない。悔しいだけ。
仕事を取り上げられてあんな場所に行かされて…。」

梨花がまた泣いて土方は胸を貸した。

そして梨花の髪を撫でて抱きしめると
土方はキスをして
梨花をまた抱きしめる。

土方は部屋を見回して
梨花と愛し合った記憶を辿る。

「懐かしいな。この部屋。

ベット変えたんだな?」

ベッドに移動するとあの頃とクッションが変わったことにすぐに気がついた。

梨花はそのベッドを手放した時のことを思い出した。

土方と別れることを決めた時、
梨花はベッドを変えることにした。

土方が去った後、何度も愛し合ったベッドで
土方を恋しく思ってしまうのが嫌だった。

そしてこのベッドに変えて、
最初に寝た男が桐原だった。

「涼の匂いが消えなかったから。」

それを聞いて土方が言った。

「お前って人一倍寂しがりなくせに
どうして人を寄せつけないんだ?」

「涼のことは寄せつけたでしょ?」

「梨花と付き合って何度も寝たけど…
梨花はいつだってココロまではくれなかった。」

土方はあの時の梨花との記憶が蘇る。

梨花は心は開かなかったけど
土方と逢わないのは我慢出来なくて
土方が誘えばどんなに疲れていても逢ってくれた。

「繋がってたのはカラダだけだったけど…
お前にはそれが重要だったんだよな。

愛されてる事を他では実感出来ないから。」

梨花はそんな風に考えたことがなかったが
言われてみれば間違いではなかった。

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