どうやらホラーゲームの世界に迷い込んでしまったようです
もうすぐ夏生の家だ。


「ほら、あの角を曲がったらお前の家だろ」


「うん」


「なんだよ、ちゃんと無事に帰ってこれたろ。それでいいじゃねぇか」


まだ不安なのか、僕の手を握り返す夏生。


「家の前まで!」


「はいはい、仰せのままに」



言われるままに夏生を家の前まで連れてくる。


玄関を開けて、部屋の電気が付くまで僕は家の前で突っ立っていた。


あぁ、時間の無駄だ。


この時間が無駄でないことを、誰か証明してくれ。



なんてことを考えていても仕方のないことなので、僕は自分の家へ帰ることにする。



「まぁ、夏生があんなに僕を頼るのも珍しかったしな」


いつもの夏生なら怖いものなしで、休み時間だって他の男子とじゃれあうし、喧嘩だってする。


遊園地のお化け屋敷だって率先して入るほどだ。



そんな男勝りなアイツが、たかがゲームにここまで毒されるとはな。


そんなに怖い話だったっけ?


「確か、道端に綺麗に包装された本が落ちてるんだよな」



んで、それを拾うか、拾わないかで。



「あれ、拾ったらどうなるんだっけ」


片手間に聞いていたので、殆ど覚えていない。


うろ覚えにも程がある。



「あー、急に気になってきた。でも夏生からは直接聞けそうにもないしな」



明日、落ち着いてたら聞いてみるか。




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