黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい
「潮目が変わったのだ。お前は結婚を引き延ばしすぎた。もはや旧王家の血筋など必要ない、あの娘は争いの火種になる」
「フェリシティに会わせてください。妾になることを拒んでいるなら僕が説得します。ランピーニ侯爵家と旧派の両方を掌握できれば、王家はより盤石でしょう」
マルジオは窓枠に片手を置き、神経質に何度も人差し指を叩きつけた。
息子を慰めるように優しく諭す。
「これは王女が望んだことだ。不運な娘の最後の願いくらい、叶えてやりたいと思わないか。もっとも、もし私が彼女なら、自分の生まれと容姿をもっと国のために役立てただろう。たとえば、敵国の英雄を誘き出して今度こそとどめを刺す」
オスカーが息をのんだ。
王はすべてを知っている。
ギルバートは歯を食いしばり、叫びたくなるのを堪えた。
目の奥が怒りで熱くなる。
全部ギルバートのせいだ。
ギルバートが敵国の王女と出会ったせい。
愛し、戦ったせい。
マリウスに負けたせいで、フィリーを信じさせてやれなかった。
いつだって遅すぎた。
なにもかも跡形のないところで剣を振るたび、復讐の鎖が足に絡みつき、ギルバートを地獄へ引き摺り込む。
汐に満ちていくブロムダール城を見下ろし、マルジオが口の端を歪めた。
「だが彼女には荷が重かったらしい。もう少し簡単な方法を選ばせてやった。朔の日の黄昏時、ミラベラ家は落日とともに終焉を迎える」