ある日、ビルの中、王子様に囚われました。


「……俺の事、もっと知りたい?」

「えっと……」
はい、と小さく答える。フッと笑われた気がしたけど、それは嫌だと思わなかった。
この不思議な状況が少しずつ分かってきた今、もっと知りたい。

知りたいけれど、距離が近くてどうしていいのか分からなくなる。

「新澤とは従兄弟同士で、新澤の親にあいつの教育を小さなころから任されてうんざりしている。腐れ縁だが、腐れて朽ちて縁が切れてくれればいいのだが、いい加減なくせに仕事ができるから使えるうちは世話をした分使ってやるつもりだ」

「ふふ。だからあんな風に仲良しなんですね」

説明してもらえれば、天宮さんの態度に納得が出来た。
納得どころか二人が可愛いとさえ思えてしまう。


「……知りたいのは、そんなこと?」

天宮さんの肩越しに見えていたフロア表示画面が、18階の部分で肩で隠れた。

更に距離を詰められたと知ったのは、触れそうなほど近くに来ていたのだと気付いた時にはもう遅い。

天宮さんの腕の中に囚われた後だった。
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