ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
捨てられたウサギの様な表情にほだされ、ずるずる半同棲みたいに天宮さんのマンションに帰っていたら、ある日いきなり私の住んでいたアパートの荷物を引き払ってこっちに運び込まれたんだから、もう騙されない。
「は、はやく行きましょう。今日はおじいちゃんとお兄ちゃんとビル内のレストランで食事でしたよね」
「そうです。その時に、指輪も取りに行きましょうね」
優しく笑う癖に、なんだろう。
蛇に睨まれた蛙のごとく私は、小さく息を飲む。
「そのままホテルに閉じ込められる前に、覚悟を決めていてくださいね」
じいっと見られる。
なんだか恥ずかしくなって、銀色のフレームの眼鏡を奪うと、切れ長の瞳が目を細めた。
眼鏡をかけているストイックな天宮さんは偽物だ。
きっと眼鏡を外した瞬間に見える、獲物を追い詰めて食べちゃいそうな素の天宮さんの方が本物なんだ。
「そんなに耳まで真っ赤にするなら、奪わないでください」
「だって、眼鏡してない方が私の顔見えにくいんじゃないかなって」
恥ずかしくて台所へ逃げようとした私の腕を掴む。
「残念ながら、見えなくなる分、顔を近づけなきゃ行けなくなります」
「きゃっ」
引き寄せられて、天宮さんの足の上に乗ってしまう。
かああっと耳まで熱くなった私の腰を更に引き寄せる。
「観念してくださいね。――俺の腕の中に閉じ込めますよ」