ヴァージンロード <続>Mysterious Lover
3. 再会

『おかけになった電話は、電波の届かないところにあるか……』

オレはスマホの通話を切り、リムジンバスから降りた。
視線をあげると、懐かしい西新宿の高層ビル群が目のまえにそびえている。
ビルの谷間に広がるのは、からりと澄んだ空。

どうせ寒いんなら、やっぱり晴れてた方が気持ちいいよな。
雨続きのバンクーバーを思い、久しぶりに目にする青空に向かって伸びをして。
都庁方面へ、スーツケースを転がしながら歩き出した。

奈央さん……撮影中かな。
直接会社に会いに行ったら、驚かせてしまうだろうか。
でも、早く会いたいし……。

ドンッ

いつの間にかペースが遅くなっていたらしく、前方から歩いてきた誰かにぶつかってしまった。

「あ、すみません」

視線を下げて謝ると、オレを見上げた相手の女の子、高校生くらいだろうか?
その顔が、ボンッと爆発音が聞こえそうなくらい、一瞬にして見事に真っ赤に染まった。
そのままバタバタと友達と一緒に駆けていく。

——みっちゃん、見た!? 見た? 今の人ッ!
——うん、見た! めっちゃイケメンだった!
——うんうんっ! 芸能人みたいだったよね!

……聞こえてますけど。

オレは小さくつぶやいて、よいしょっと、再びスーツケースを引っ張った。
< 33 / 173 >

この作品をシェア

pagetop