ヴァージンロード <続>Mysterious Lover

同じ季節でも、今日本で盛り上がっているのは春節じゃなくてバレンタインのようだ。
街全体が、ロマンチックなパステルカラーで彩られてる。

オレは昔、このイベントが苦手だった。
興味もない女子からもらう大量のチョコレート。
捨てることもできなくて、友達に配れば妬まれて。
一体どうすりゃいいんだよ? って、毎年憂鬱だった。

だから、アメリカに留学して、
女子から男子へ、っていうのが日本オリジナルの習慣であることを知って、
どれだけホッとしたかしれやしない。

でもそれは一昨年までで……。
去年、奈央さんからチョコレートが届いた時は、めちゃくちゃうれしかった。
オレってかなり単純な男だったんだな。

そんなことを考えながら。
伊勢丹まで数メートルのところまで来た時。

げ……っ

ぴたりと、足が止まった。

今、まさに伊勢丹に入っていこうとしている中年の女性が目に入ったから。

ジャラジャラと、無意味にアクセサリーを重ねづけした、その人は……

ホストクラブでバイトしてた時の客だ。
確か……新島、だったっけ。
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