私を作る、おいしいレシピ
1.嘘つきはヤンキーと出会う

そんな子供の時の感傷を、いまだに思い出す私。
我ながらしつこいと思う。もう高校二年の冬を迎えているというのに。


「お昼食べよー……ってあれ、瑞菜(みずな)またいないね」


お昼休みの鐘が鳴るとともに、私はいつも、友人たちに見つからないように教室を抜け出し、廊下で彼女たちの声に耳を澄ます。


「水やりとかじゃないの。瑞菜いつも忙しそうだもん」

「そだね。まあいいや、食べよー。もう死にそうなほどお腹すいたよ」


みんなの気がそれたのを確認して、ホッと一息ついて歩き出した。

そうそう私のことなど気にしないでどうぞ。

生徒会活動に園芸部としての花壇の世話。
忙しい日々を送る私は、東條(とうじょう)瑞菜、十七歳。
身長は百五十ちょっと。髪は顎までのボブ。たぶん周りにはそこそこ快活な子だと思われているに違いない。

忙しそうにしているのは敢えてなんだけどね。
だってさ、これ見られたらちょっとドン引くよねって思うんだ。

右手に持ったランチバックの中には、まん丸のおにぎりが二個入っている。
逆に言えばそれしか入っていない。おかずもデザートも何一つない。



『お弁当、悪いけどこれで買ってくれる?』


そんなメモ書きとともに残されるお金。
それを私は貯金に回す。ひとえに、卒業したら一人暮らしをするために。
代わりに、自分で炊いたご飯をおにぎりにして持ってきているのだ。

でも、同級生のお弁当って、そりゃあもう可愛いんだよね。
色とりどりのおかずは、それだけ愛情たっぷりに作られている。
「今日ババ色ー」って言ってる茶色だらけのお弁当だって、お肉や煮物が入っていてしっかり栄養バランスは考えられたものだ。
さすがにね、そんな可愛いお弁当の前でおにぎりだけを食べる勇気は私にはないわけ。

< 3 / 62 >

この作品をシェア

pagetop