下手くそな恋を泣きながら
並木の終わりの一本の木に引っかかった風船は池の脇にある小さな休憩スペースで私を待ってるようにも見える。
人通りはあるのに誰も木に引っかかった風船なんかに振り向かない。
とぼとぼ歩いてその木の下までくると池を眺める事ができる休憩スペースを横目にかかとをあげた。
届きそうで届かない。
爪先に微かに触れる風船の紐。
もうちょっと限界まで背伸びしてみても指先に触れるくらいで紐を掴まえることができない。
風船を手にいれた所で邪魔になるだけ。
早くそこにあるベンチで休憩したい。
そんなことを頭の隅で考えながら思いきり手を伸ばしても、紐を掴まえることはできなかった。
こんなに近くにあるのに届かないのは
まるで何かの感情にも似た切ない距離感だと感じて、伸ばした腕を引っ込めたその時
隣から黒いトレンチコートの袖が伸びて意図も容易く風船を掴まえたから、驚いて顔をあげると
そこには、ここにいるはずのない相手がいて、思わず口を大きくあけて言葉を失った。
それは
相手も同じだったのか、風船を私に差し出しながら一瞬の間をおいて、目を見開く部長の姿がそこにあった。