男嫌いな女王様とクールな臣下
朱音は、受付嬢の後ろについてオフィスの中に入っていく。

広いフロアが開放的な空間になっている。

前野の席はすぐに分かった。
彼は、周りより少し大きな机で、窓側に背を向けて座っている。

彼の判断を仰ぎに、何人かが列に並んでいる。

彼と話してた女の子が私に気が付き、前野さんに伝えてくれた。

「どうかしたの?」
朱音に気が付いた彼は、立ち上がろうとした。

朱音は、彼のことを押しとどめるために、何歩か彼に近づいた。

「仕事が終わったら、時間作って欲しいの。いつになっても構わないから。待ってるね」

「今日かい?」

「ええ、出来れば。無理かしら」

「遅くなっちゃうかもしれないよ」時計を見ながら言う。

「そっか……無理なら仕方ないです。無理しないでください。
少し、顔が見たいと思っただけなの。気にしないで仕事続けて」

「そっか、わかった」

朱音は、一礼するとオフィスから出ることにした。

本当なら、ここでしばらく彼の仕事をする様子を見ていたかった。

けれど、
「このビルのプロジェクトの社長さんですよね?新聞見ました」と何人かに声をかけられてそれは諦めた。

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