お見合いですか?
 「はっ?」
 一瞬固まった。声が出て来なかった。
その間に彼女は、考えておいてと言って席を立ってしまった。

 なんだそりゃ、だいたい、別れて欲しいと言ってきたのは彼女のほうだった。
今更、やり直したいって言われても。。
でも、直ぐに断れなかった。
まさか、そんなことを言われるなんて思ってもみなかった。
取り敢えず、会社に戻らねーと。
一旦、忘れる事にした。

 
 少し、残業をして帰宅した。
玄関を見ると、愛実の靴が置いてあり、もう帰ってきているらしい。
そのまま、玄関のドアを閉めようとしていたら、話し声が聞こえてきた。
思わず、耳を澄ませてしまった。
なんか、会えて嬉しかったとか、はしゃいだ声が聞こえて、男か?と思った瞬間、背後でバタンとドアが閉まった。
思いのほか、大きな音で、ビクッとした。
その音に彼女も気付いたようで、パタパタと玄関までやって来た。

 「お帰りなさい。」
「ただいま。」普通に言えただろうか?
別に悪いことをしたわけでもないのに、後ろめたい気がして来る。
多分、お互い様だ。
今、目の前にいる彼女は、なんだか気まずそうだった。
電話の相手は男だな。しかもずいぶんと親しい感じだった。

 その夜は、お互いにぎこちなかったに違いない。
触れていいのか解らないまま。
あたり障りのない、会話を交わした。

 
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