お見合いですか?
覚えてないのか?
 撮影後、知り合いの広告代理店の担当者、田島と雑談をしてると、舞が話しかけてきた。
馴れ馴れしく腕を組んでくるのは、いつもの事なので、特に振り払わなかった。

 昼飯をどこで食べるか、という話題になった頃、森高愛実がこっちに近づいてきた。
「これから、昼飯にいくけど、一緒にいく?」と、普通に話しかけた。
彼女は、「すみません、事務処理が滞っておりまして。さきに戻ります。」と会釈をしながら断ってきた。そこまでは良かった。
彼女は、更に一歩詰めてきてこう言った。
「支社長、不貞行為は、許されませんよ。」と。
言うだけ言って、彼女は立ち去った。

 一瞬、固まった。

 田島が堪えきれずに、吹き出した。
隣にいた舞が、何事?といった感じで田島を見ていた。 

 「お前、いつ結婚したの?」田島が呆けてた俺に聞いてきた。
「ええ、武中さん結婚したの?」更に舞が突っ込んでくる。

 「えっと、正確にはまだ結婚はしてないけど、まぁ、近い内にする予定かな。」

「なんか、面倒くさそうですね、あの人。じゃあ、私もここで失礼します。お疲れ様でした。」舞が、あっさりと腕を離して、去っていった。

 結局、田島と2人で適当な定食屋に入った。

 「森高さんだっけ?すっげえ強烈だったな。まさか結婚もしてないのに、不貞行為って。独占欲が強いタイプ?束縛とかきつい?」
 
 やたら、高いテンションで聞いてくる。
コイツぜってー面白がってやがる。
「独占欲とかじゃねーよ。」
それから俺は、お見合いして、同居していること。
3ヶ月性行為を禁止されるに至った、経緯を話した。
案の定、笑われた。

 「うわー、それ、きっついわー。同じ屋根の下で、そりゃないわー。ハハハッ はぁ、もしかして、試されてんじゃね?」

 ますます面白がる田島に、「まぁ、そうだろうね。」と、淡々と応えて、残りの定食をかきこんだ。   
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