お見合いですか?
まさか?
 紺色のノースリーブワンピを着て、周りと談笑する彼女が、視界にはいる。
 彼女は、車で来ているから、とアルコールを断り、烏龍茶を飲んでいた。
 
 明日から、お盆に入る今夜。
俺は、本社の暑気祓いという飲み会に参加させられていた。
 何時もは、面倒臭くて断っていたが、今年は愛実の歓迎会も兼ねてるから、と言われたら、来ないわけにもいかなかった。
 
 本社の殆どの人が参加する飲み会なので、居酒屋の座敷一室を借り切って行われている。
ざっと40~50人くらい居るだろう。
 彼女との席は遠くはないが、近くもない。
先ほどから、周りの男性社員がチラチラ愛実の事を見ているのが気に入らない。
何故、ジャケットを脱いでるんだ!
そんな事を考えていたら、声をかけられた。
「お前、森高さんの事見過ぎ!」
兄の将斗だった。
「うるせーよ。」
「森高さん、結構人気らしいぞ。」
「知ってる。」
ニヤニヤと笑っている兄に一言返して、視線を外した。
 
 本社では、俺達の関係は知られていない。
知ってるのは、社長、会長夫妻と、兄夫婦そして、支社の人達だけだ。
先に、愛実だけ本社にいく事になったから、知らせないほうが良いだろうってことになった。
 だから、俺が愛実のそばへ行くことも出来ず、ただ、この状況を耐えるしかないのが辛い。
ああ、ムカつく!
おかげで、結構呑んでしまった。
今日は、飲みすぎるわけにいかねーのに。
 
< 154 / 163 >

この作品をシェア

pagetop