お見合いですか?
 そういえば、朝からおかしいと思っていた。普段通りに、パンツスーツを着て行こうとしたら、母親に着替えさせられたし。
この、真冬の寒い時期に、スカートを履かされたのだ。しかもなんだかヒラヒラなやつ。
 母曰わく、「社長の息子さんが来るから」って、張り切って言っていたが、なるほど、こういうことだったのね。
 
 「お見合いみたなものって事は、断るのも可能ですよね?」
今度は、真顔で聞いた。さっきどっちでも構わないって言ってたし。

 「どうだろうね?」
今まで、ポーカーフェイスだった彼が、すこし意地悪そうに笑った。
 ドウイウコト?
眉間に皺がよるのが分かった。
私の表情から、疑問を読み取ったらしく、続けて彼が話す。
 「俺の親父と君のお父さんは、もう結婚するものだと思っているみたいだね。」
益々意味が解らない。
「どういうこと?」思わず、素で聞いていた。

 「詳しい事はこれに書いてある。」
そう言われて、渡されたのは、A4サイズの封筒だった。結構な厚みがあった。
 早速開けてみようとしたら、「あっ、後で、帰ってから確認してくれ、俺に噛みつかれても困るから。」
 はっ?私って、そんな風に見られているの?
すぐ噛みつくような女だって思われているわけ?
ちょっとムカつくけど、いやそれよりも、噛みつきたくなるような事がかかれてるの?
それってどんな事??

 なんとなく、嫌な予感しかしない。うん、見るのは後にしよう。素直に忠告に従った。
「じゃあ、そういう事だから」と笑顔で言われ
、手で出口を示された。
まぁ、もう話す事はないってことね。
「では、失礼します。」そう会釈してから立ち上がり、応接室を出た。
最後まで、やる気なさそうだったな、あの人。
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