お見合いですか?
いいのでしょうか?
 「なんか、良いことあった?」
翌日、午前中にそう聞かれた。
聞いてきたのは、林さんだ。
とたんに、昨夜のキスを思い出してしまう。
「い、いえ、何も・・・」
何となく、顔が赤い気がして、俯いた。
まぁ、愛実の場合、そこまで色白でもないので、顔色が変わっても気づかれにくい。
 なので、俯いたりしなければよかったのだ。
でも、そこに彼女は、気付いてない。
林は、俯いてしまった彼女を見て、
「ふ~ん、悠斗と何かあったんだ?」と言ったからだ。

 「何も無いですから、いいからもう出てください。仕入れの件、宜しくお願いします。 あの、本当に同行しなくてもいいんですか?」
「ああ、大丈夫。まだ、根回しの段階だから、決まったら改めて行けばいい。それよりも、伝票整理よろしく。有希が定時であがれないと困るの俺だから。」後半は声を潜めて言われた。
なる程、そっちが本音かぁ。
まぁ、私が行って、変に期待されてもだしねー。
 林さんは、森のパスタの企画のため、新たに取引をするかも知れない会社へ、挨拶に行くらしい。と言うのも、私がその会社のデミグラスがいいと言ったからだ。
まぁ、森のパスタ屋さんでも使用しているしね。そのデミグラスソースに挽き肉などを足してミートソースを作るのだ。店舗によって足すものが違ったりするので、店毎に若干味が違う。
今回は、本店のレシピを利用する予定だ。
武尊食品と取引が無かったのは、意外だった。

 有希さんの伝票整理を手伝っていると、
「ねぇねぇ、支社長と何があったの?」と、有希さんに聞かれた。
もう、何なのこの夫婦、暇なの?
「別に何もありません。」
一度、突っ込まれているので、今度はシレッと返せた。・・・はず。

「本当に~?てか、さっきから全然進んでないけど?」
「えっ?」
ああ、しまった。昨日のことを色々思い出してたら、手が止まってしまったらしい。今週末デートの約束したこととか、色々。
「まぁ、いいや、もうお昼だよ。」
そう言われて、時計を見ると、確かに12時を過ぎていた。
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