お見合いですか?
 彼女は、慎重に言葉の裏側を探ってくる。親父に探りをいれたが、特に変わった様子はなかった。お昼を一緒に食べたかったが、若い子達と行ってしまった。とメッセージに書かれてた。
「いや、本当のこと言うと、昼飯一緒に食えなくて、残念だったって。」
「ああ、ちょっと若い女の子の意見を聞きたくて。森のパスタの。」
「ふーん、パスタのねぇ。悠斗のこと聞いてたんじゃないの?」
一瞬、彼女の顔が強張った。でも、それも直ぐに戻し、「話の流れで、その様な話題になってた気もしますけど。それが、何か?」

 「うーん、・・・もしかして、有希が言ったことが原因?」
少しポカンとしている。
やがて、思いついたのだろう、ああという顔をした。
 「原因というよりは・・・きっかけ?
あっ、コーヒーが出来た。林さんも飲みますか?3杯分淹れたんで。」
「あっ、ありがとう。」
「お砂糖入れますよね。」
「よく知ってるね。」
「はい、有希さんがいつもいれてましたから。愛情感じません?有希さんの。」そう言って、彼女は、俺にコーヒーを渡してくれた。
給湯室の出入り口は狭い。
いつまでもここに居るわけにもいかず、「ありがとう。」と、受け取り自分のデスクへ戻った。
 彼女は、休憩スペースで休んでいるようだった。
 暫くすると、悠斗が戻ってきて、「お疲れ、もう、終わるか?」と、訊かれた。
「ああ、お疲れ、もう終わる。」
「そうか。」そう言うと、悠斗は、デスクに荷物を置いて、当たり前のように給湯室に向かった。それを、横目で見ながら、今日の分の仕事を終わらせた。
デスクで、コーヒーを飲んでいる悠斗に
「メール送ったから、確認してくれる?」
と言った。
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