お見合いですか?
流されてませんか?
 どれくらい、見つめ合っていたのだろう。
多分、時間にしたら、2~3秒位。それでも、長く感じた。
 「違うんです。」と言ったものの、言葉が出て来ない。彼は、少し不安そうな表情のまま、私を見つめてくる。
一度目を伏せ、視線を外し、ぽつりと、話し始める。
「えっと、、嫌いになったとかじゃ無くて、・・・一度、リセットしなきゃって、なんて言うか、そうしないと、後で、流されてこうなったって、後悔しそうで、・・・・それで、まずは、情報収集をしようと思いまして。」
「何で?情報収集?」
「うーん、私は、何も知らされないまま、打ち合わせかと思ってたら、お見合いだって言われて、しかも、転職まで決まってて。
 そして、こっちに着いたら、一緒に住む事になってて。なんだか、外堀からじわじわ埋められてる気がして、そこに、私の意思なんか、関係ないんじゃないかって。 
 だから、どうしてこんな事になったのか探ろうかなぁと、思って。
 でも、ただ、情報を集めても、見えて来ないから、先ずは、仮説を立ててみたんです。」

「えっと、何なんだ?その推理小説みたいな展開。」

「推理小説?」
「いや、なんか仮説って言葉、推理小説でよく見かけるじゃん。」
「ああ、確かに。てか、ミステリー好きなんですね。 って、まぁ、いいや。で、その仮説に沿って、先ずは悠斗さんの事から探ろうかなぁと思った訳です。」
「何だよ、その仮説って?」
ちょっと、不機嫌になりながら、聞いてくる。
まぁ、何となく見当はついているのだろう。

「えっ、言って良いんですか?」
「良いから聞いたんだろうが。」
「まぁ、次男坊の女遊びが、なかなか治まらず、心配した武中社長が、とうとうお見合いを画策したのかなぁと。」

「ふ~ん、それで、仮説は検証できたか?」
「はい、結構合ってると、思います。」
「で、問題は解決できたか?」

 問題って、このままで良いかどうかってことだろうか?
「それが、更に不安になりました。」
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