お見合いですか?
 自宅に戻ってきたのは、夕方で夕飯にはまだ、早い時間だった。
とりあえず、買ってきたものをしまってから、彼女が「お茶でも淹れますか?」と、聞いてきた。
冷蔵庫からビールを取り出して、「こっちがいい」と言うと、彼女も笑って「わたしもー。」と言ってビールを持ってきた。

 ソファーに2人で並んで座って、乾杯をした。彼女が、乾き物のおつまみを皿に入れてだしてくれた。

 テレビをぼんやりとしながら、見ていると、彼女が、ふと思いついたように言った。
「そう言えば、結局、同棲を決めたのは、悠斗さんだったんですね。」
ああ、そんな事を、昼間話したなぁ、と思い出した。
「そうだな、元々はちゃんとワンルームのセキュリティーの良い物件を探してたんだけど、なかなか無くてさぁ。そう言ってたら、康太が、うちのマンション、まだ空きが有るみたいだって言ってきて、、
 ああ、その手があったなぁって。要は、ルームシェアってことにすればいいかなぁって、どうせ、お見合いを断らないのなら、一緒に住む事になるだろうし。だから、親父には、そう言った。どうせなら、早く一緒に住みたいって。」
「そう言うこと、だ ったんですね。」
力が抜けたようにだらりと、彼女の手がソファーの上に置かれた。
その手を取り、軽く握った。
親指で、手の甲を撫でてると、やはり彼女はくすぐったいという、顔をした。

 「なんか、納得しました。私も、最初は仕事の為というか、うち用のケーキとか作ってもらえるかもって。 そう、思ってたんです。」
彼女が、気まずそうな表情で、話した。

 「だから、お見合いも断らなかったのか?」
「はい、父に説得されたと言うか、時間をかけて考えろって。 そりゃあ、結婚は簡単に決めていいものじゃないし。 一度、前向きに考えてもいいのかなって・・・」
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