お見合いですか?
それから、俺がカートを押し歩く。
「愛実、夕飯はさぁ、買って食わねー?」
「えっ?何で?」
「なんか、疲れた。愛実も疲れたろ?そうしよぜー」
惣菜コーナーを目指して歩いた。

 彼女が遅れてついて来る。
彼女が追いついたところで、歩幅を合わせた。

 惣菜コーナーでも、時間をかけて選ぶ彼女に、面倒臭くなって「両方買えば?」と言ったら、「食費は私が払うんですから、両方は買いません。」
「はいはい、俺が払うから、さっさとしろ。」
「いいんですか?わーい」
すると、彼女は躊躇うことなく、両方カゴにいれた。ついでに、おつまみ買いましょうよーとか言い出して、カゴに入れていく。
分かりやすい。こいつ、確か、社長令嬢だったよな、一応。
はしゃいでいる彼女を見て、これ位でこんな喜んでくれるなら、安いものか。
 高級車で迎えに行っても喜ばなかったくせに、惣菜を買うと喜ぶのか。
ちょっと複雑だ。

 会計を済ませて、買った物をレジ袋に詰めている彼女の元へ向かう。
彼女から、レジ袋を取り上げて持つ。
「あっ、すみません。」そう言いながら後をついて来る彼女は、少し照れているようにみえて、ああ、女の子扱いされることに慣れていないんだなぁ、と感じた。

 苦手だったはずなのにな、そういう女の子。

 高3になってから、自分から好きになった子じゃなくて、自分を好きだと言ってくる子としか付き合わなくなった。

 その内、ずるくなって、相手の好意に漬け込むようになった。
付き合っている子がいるのに、他の子と仲良くしたり、ちょっとでも合わないと思ったらすぐに別れてたし。
 そんな事を繰り返していると、周りも変わってくる、類は友を呼ぶという事だろうか。
俺に寄ってくる子は、割り切った関係を望んでいるような子とか、男はアクセサリー位に考えているような子ばかりだった。
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