お見合いですか?
モテるんですか?
 「今日からお世話になります。森高です。よろしくお願いします。」
とりあえず、無難に挨拶をすませた。
 今日は、武尊食品東京支社に初出勤の日だ。
お見合いの事は、言わないくていいからと言われ、結局、超シンプルな挨拶となった。
とは言え、それで良かったようだ。
挨拶が終わるなり、皆さっさと自分のデスクに戻った。
な、なんか、アウェイ?
私、歓迎されてない?

 「じゃあ、森高さんのデスクはここね。」
と林さんに言われ、ほっとした。
林さんは、癒し系だ。人の良さそうな顔をしている。そして、少しぽっちゃり系?背は高いんだけどね。支社長より高い。
 私の仕事は、支社長のサポートらしい。
今日は、経費をまとめれば良いらしい。 
単調な数字の入力作業をこなしていった。

 ここ、武尊食品の東京支社は、主に広報部門と仕入れを担当している。
仕入れは、こちらに本社がある業者との取引だけを担当しているらしい。
 社員は私を含め5人と、こじんまりした支社だ。

 待ちに待ったお昼、私以外の唯一の女性社員である、小西さんを誘い、小西さんお薦めの定食屋さんに来た。
 「本当に安いですね。雰囲気もいいし、いい所教えてもらいました。」
「でしょう。味もいいんですよ。」
他愛ない話をしながら定食を食べる。
ほとんど食べ終わる頃、探りを入れるように、
聞いた。
「人手が足りないって、言われてきたんですが。誰か退職されたんですか?」
すると、小西さんは、「知りたい?」と意地の悪い笑顔を向けてきた。
 小西さんは、宝塚の男役が似合うようなシュッとした感じの女性だ。
背が高くて、性格は姉御肌みたいだけど、今は、いたずらっ子みたいだ。

「ま、まぁ、できれば」
「う~ん。話せば長くなるから、簡潔に言うと、訳ありで辞めてるわよ。」

 簡潔にしすぎてないか?
随分と、省かれている気がする。
いや、気のせいじゃないか。
お昼休みが終わっちゃうしね。
れこ以上聞き出すのは、今は無理か。

 取り敢えず、会計をするため立ち上がった。  
< 6 / 163 >

この作品をシェア

pagetop