お見合いですか?
 「今週のコンビニの会議だけど、森高にも参加して貰いたいんだが、都合がつくか?」
「えっと、何曜日ですか?」
「水曜日だけど。」
「ちょっと待ってください。」そう言って彼女は、自分のデスクへ向かう。

 「あ、大丈夫です。本社に行くのはまだ先でした。」
スケジュールを確認した彼女が答える。
「分かった、じゃあ宜しくな。」

 はぁ~っと、ため息がでる。
それも全部、今日の会議のせいだ。
今日は、愛実も一緒だと思うと、憂鬱だ。
本来なら、嬉しいはずなのだろう。
誰だって好きな人と一緒に居られるのは、嬉しいに違いない、だが、憂鬱だ。
はぁー、何か騙しているみたいで気が進まない。
元々、俺だけがでる予定だったのだ。
林の伯父さんが、彼女も参加させるようにした。何か企んでいるに違いない。
 
 おそらく、愛実は試されているのだろう。

 会議が始まった。
この夏発売の新商品の試食会議だ。
大手コンビニから、要望を聞き、改善策を話し合う。まぁ、こちらとしては訊かれた質問に答えるくらいで、後は向こう任せだ。

 「森高さんでしたっけ?どう思います?」
そう聞いてきたのは、この会議の最年長の男だった。
「すみません、森高は今回の試作品の試食をしておりません。急に参加が決まったので。」
と、俺が庇ってやったのに。

「うーん、見た目だけで言ったら、残念です。ソースにもっと透明感が欲しいです。」
「ああ、確かに、そのほうが清涼感があって良いですね。」開発担当の若い女の子が同意した。

結局、会議はソースを見直すということで、終了した。

 「お疲れ、どうだった?」
ハンドルを握りながら、帰りの車の中で訊いてみた。
「まさか、意見を求められるとは思ってませんでした。試食もさせてもらえたし、勉強になりました。」
そう笑って言う彼女に、少し罪悪感を感じてしまう。
おそらく、彼女に意見を聞いたのは、林のおじさんが裏で糸を引いている気がしたから。 
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