お見合いですか?
 その夜、林の伯父さんから電話があった。
ちょうど、愛実はお風呂に入っていたが、なんとなく寝室に入ってから、通話を開始した。

 「はい、どうしたんですか?」
「ああ、悠斗か?どうだった?今日の会議。」
「メールで送った通りです。」

「聞きたいのは、愛実ちゃんのことだよ。連れて行ったんだろ?」

「はぁ、伯父さんが参加させろって言うから、連れて行きましたけど。」

「だからさぁ、正直お前はどう思ったんだ?」

「ん、まぁ、使えるなぁと思いますよ。味覚も良いし、指摘も良い所を突いてます。なによりも、発想力があります。どこをどう変えれば良いか、そのアドバイスが的確だと思いますよ。
森高は、このままうちの会社にいてもらいたい人材です。」

「そうか、だったらさっさと婚約しろ。」
「そうしたいのは、俺も同じ何ですけどね。」
「何か、問題でもあるのか?」
「問題は、ないと思います。・・ただ、このまま進めてもいいか迷ってます。」
「珍しく弱気だな。」
「いえ、そうじゃなくて、そろそろ教えてもらえませんか?」
「何を?」
「今日の会議に森高を参加させた理由です。」
「はぁー、大体解ってると思うが、会長が引退して、後進に道を譲りたいって言い出したんだ。胃を患ってから、特にその思いが強くなったらしい。」
 会長とは、俺の伯母さんだ。親父の姉なので、会長になってもらったらしい。因みに伯父さんは副社長だ。
会長は、長いこと武尊食品のオリジナル商品などの味を決めてきた。
最終的なゴーサインを出すのは、伯母さんだった。
しかし、検査で初期の胃ガンが見つかり現在は治療中だ。まぁ、今のところ通院ですんでるらしい。
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