副社長と愛され同居はじめます
言いたいことは「愛してる」

色々と




子供の頃、喘息で身体が弱かった彼は、祖父同士が親しかったためか空気の良い場所で静養を医者に勧められた際に、荒川の本家で過ごしていたらしい。
忙しい両親は殆ど彼に構わず、遠い場所に勝手に預けられ、話相手をしてくれるのは使用人ばかり。


そんな時に、やってきたのが荒川の長男の一家。
まだ三歳の私と生まれたばかりの翔太、そして私の両親だったという。


私も翔太も小さすぎて全然覚えていなかったけれど、両親は駆け落ち結婚ではあったけど、一度は関係を修復しようとしたことがあったんじゃないだろうか、今となっては憶測でしかないのだけれど。
ともかくも、私達一家と彼が、少しの間荒川の本家に滞在していたのだという。


「初めてだったよ、家族でバーベキューしたり釣りしたり……って俺は家族じゃないけど、束の間家族気分だった。それくらい、お前の両親にはよくしてもらった」


彼にとっては唯一の、アットホームな思い出が、まさか本当の家族じゃなくて私達だったなんて。


結局、荒川の祖父と両親は本家を継ぐことはせずそのまま疎遠になり、彼も体調が回復し成瀬に戻ったが荒川家とはその後も交流があったそうで。
荒川俊次とは、更に大学も同じで、仕事で何度か関わったこともあるそうだ。


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