副社長と愛され同居はじめます
はいアウト―。


と私の中で試合終了のゴングが鳴った。


だめだ。
ちーとも同情してくれた様子はない。


ああ、一流商事勤務、いずれは玉の輿に……儚い夢だった。
こうなったら、キャバのバイトに本腰入れてこっちの路線で金持ちを捕まえるしかないか。


早々に頭の切り替えを始めた私に、やっとかけられた言葉は予想とは少し違った。



「給料は、普通に生活する分には充分な額が出ているはずだ」

「……え?」

「そんな似合わない格好をしてまでバイトしなければならない事情はなんだ」



え。
に、似合わないですか。


と軽くショックを受けながらも、今は多分論点はそこではない。


「……この春、弟の大学進学が決まりまして。学費だけならまだローンとか利用すればどうにかなったんですが、仕送りが必要なんです。家から通えたらよかったんですが、通学できる距離じゃなくて」

「…………」

「あ、うち親がいなくて。私が親代わりなので、それで」

「それは知ってる」

「は?」


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