副社長と愛され同居はじめます
成瀬さんの微笑みに、つい飲み込まれてしまった私。
そうなると、場の雰囲気にもいつの間にか酔っていて、ぼやぼやしているうちにすっかり彼のペースだった。


後はろくに試着もしてないドレスやお店用じゃないワンピースやスーツまで、彼は私が欲しいとも言わないのに大人買いしてしまい、戸惑う私に「大丈夫だ、俺の目は確かだ」とかよくわからない見当違いのセリフを放った。


似合うか似合わないかの心配でもないしサイズの心配でもない。
そうじゃなくて、なんでこんなことをされているのか貴方が私に出会いにきた理由もまだ謎のままなのに、マイフェアレディごっこに興じていていいのだろうかと、我に返ったが故の戸惑いだ。



「う、嘘でしょう?」

「何がだ」



成瀬さんが選んだドレスとネックレス、華奢なミュール。
それだけじゃない、いつもは自分でセットしている髪や、メイクもプロの手によって施された、昨日まで店にいた「ヒナタ」とはまるで別人。



「こ、これで本当にお店に出ろって?」

「何のためにドレスアップさせたと思ってるんだ?」



成瀬さんが心底不思議そうな顔を私に向けながら私の手を取り、自分の肘に添えさせた。


ヒナタ、初めての同伴出勤というやつである。


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