副社長と愛され同居はじめます
「とにかく翔太はしっかり勉強して」

『してるよ勿論』



小走りで行く道の景色が、私を急かす。
腕時計を見れば、乗車予定の電車の時刻が迫っていた。



「ならいいけど。姉ちゃん急ぐから切るわよ」

『何? 仕事終わったんじゃないの?』

「終わったけど飲み会があるの。じゃあね」



通話を切ると同時に、携帯をバッグに放り込んだ。


休んでいる時間はない。
かといって、すきっ腹ではキツイなと、駅構内の売店で栄養補助食品のクッキーを買ってから、ホームに着いたばかりの電車に飛び乗った。


行先は、電車で小一時間ほど揺られて着く繁華街である。
だけど、弟に言ったように飲み会に赴くわけではない。


それならわざわざ、会社から一時間も離れた駅に向かう方が面倒だ。
そこまで行かずとも、いくらでも店はある。

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