副社長と愛され同居はじめます



「お父さんとはね、かけおち結婚だったのよ」



うふふ、と恥ずかしそうに母が話してくれたのは、中学くらいの頃だったと思う。
どちらの両親にも猛反対されて、二人で地元から逃げてきたのだと。


ああ、だからうちにはおじいちゃんもおばあちゃんも存在しないのか、と納得した。
子供の頃から友達との会話に夏休みの終わりなんかによく出てくる、田舎に帰省したとか親戚で集まったとか、そういうことがうちには一切なかった理由がそれだったのか、と。


だから両親の事故以降、私達は本当に、ふたりきりの家族だった。


辛うじて私が成人していたから、弟と離れ離れにはならずに済んだけれど、他に誰に頼る術もない。


大学も辞めて働いて、私が姉なのだからと弟をなんとか卒業させなければと生活することに必死で、毎日心細かった。


その時に、突然現れたのが従兄に当たるという、荒川俊次だった。


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