副社長と愛され同居はじめます
あー、今思い出してもムカつく。


ど田舎まで怒鳴り込みに行けば、私はハエでも払うようにすげなく追い返された。



「こんなとこまで来て金の無心かよ、これだから貧乏人は品がないよな」

「人を騙してバックレたあんたよりはよっぽど上品に生きてるわよ!」

「んだと?!」



止めに入ってくれた人が居なければ多分私は殴られていたけれど、頭に血が上っていたのできっと噛みつき返していたと思う。
そしたら、あの最低男のことだからきっと傷害だなんだと警察沙汰にされていたかもしれない。



あの、人を馬鹿にした顔。
一生忘れないぞ。



思い出して腹を立ててたら、ぐうぅと腹の虫が騒ぎ始めた。



「……成瀬さん。お腹空きました」



声をかけてみたけれど、多少身じろぎしただけで反応は乏しい。
こんな風に人を抱きしめて眠っているのを見ると、ほんの少し、可愛らしいような気がしてくる。


……構わないだろうか。


恐る恐る、髪に触れて指で梳いた。

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