和花葉さんは今日も






視線をあげると、視界の端に人影がうつったような気がした。




……こんなところに人なんているはずがない。

だって、人影は、ここよりももっと草が生い茂るステージの裏側の方へ消えたということになるのだ。




そうは思うが、見間違えではなかったとも感じていた。

気になるので、雑草の中に踏みいっていくのは少々はばかられるが、人影が行ったと思われる方へ歩を進める。

どんどん高くなる草をかき分けるようにして、歩いていくと気づいたことがあった。



草が踏まれた形跡があったのだ。



やはり見間違えではなかったのか、と何処か嬉しい気持ちになると同時、緑ばかりだった視界が、ひらけた。







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