ムシ女
気持とは裏腹に、逆隣の棚が倒れる音がした。


薬品が次々と棚から飛び出し周囲に転がる。


透明な液体が混ざり合い、色が付く。


それが体に害があるのかどうか、あたしには見当もつかなかった。


両隣の棚からあふれ出た薬品が、地震の揺れで左右に流れる。


それはあたしの足元まで流れてきた。


咄嗟に身をよけようと、テーブルの足から手を離した。


瞬間、さっきまでより激しい揺れが襲いかかりあたしの体はテーブルの下からはじき出されてしまったのだ。


床に流れた薬品が体にまとわりつく。


そんな中、1つだけ残っていた棚が大きく傾いてくるのが見えていた。


まるでスローモーションのように、ゆっくり、ゆっくりとあたしに迫ってくる。


こんなにゆっくりに見えているのに、自分の体を動かす暇なんてどこにもなかった。


気が付けばあたしは床に横倒しになり、意識を失っていたのだった……。
< 3 / 155 >

この作品をシェア

pagetop