苦手だけど、好きにならずにいられない!
「…駄目なの?」
先輩が寂しそうな声で言う。
私は小さく頷いた。
「私、片想いしてるんです。馬鹿げた叶わないっこない恋なの。芸能人に恋してるみたいな感じかな。
先輩の気持ちは嬉しいです。尊敬してるし、これからも一緒に仕事していきたい。良い返事が出来なくてごめんなさい。
曖昧な気持ちを隠して付き合っては、先輩を傷付けてしまうから…」
「…撮影に戻れよ……俺、アリシアさんにタキシード借りてくる…」
と言うと、寺島先輩はホテルの方へフラフラと歩き出した。
夕べは一睡も出来なかった。
朝のブッフェ・レストランで物憂げにベーコンを突く。カリッカリに焼けたそれはうまくフォークに突き刺さらない。
カン、カン、カンと陶器と金属がぶつかり合う音が耳触りだ。
予定通り無事撮影は済み、寺島先輩は表面上普通にしてくれている。だから私も平静を装ってるつもりだけど……
落ち着かなくて、わあ〜って走り出したくなる気分。久しぶりに男性から愛を告げられて動揺している自分が心底情けない。
今日のフリータイムはどうしよう。
何もなければ寺島先輩を誘って、空港のデューティフリーやお土産屋さんに行くつもりだったのに…