苦手だけど、好きにならずにいられない!

それにしても、こんなすごい車は初めてだ。

後部座席のクリーム色の本革のシートは飛行機のファーストクラスのそれが2台並んでるみたい。車の中なのに大理石っぽいテーブルまであるし…

天井にはちっちゃいシャンデリアまで付いてる!

あんまり驚いて庶民丸出しはみっともない…と思ってたのに、想像以上の室内の広さ、内装のゴージャスさにだんだん黙っていられなくなる。


「すごいですね…私、こんな車初めてです」

「そうか?それにしてもその格好はひどいな。これを掛けなさい」

デレクは笑いながら男もののツイードジャケットを差し出した。

明かりが乏しい中でも彼の瞳が灰色かがったブルーだということが分かる。

笑うと目尻に優しい皺が出来ると発見出来たのもこの距離だからだろう。

ジャケットからはふわりと男性ものの香水の匂いがした。
優しくて安心する匂い。包容力ってやつを匂いにしたら、こうなりそう。


「すみません…実は元カレと揉めてしまいまして」

つい口から言葉がこぼれていた。

何、プライベートなこと話しちゃってるんだろ。私。こんなこと普通、社長相手に言わないよ。

「ほう」

デレクは正面を向き、天を仰いだ。



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