苦手だけど、好きにならずにいられない!
「私が悪いんです。
油断していて元カレを家に入れてしまったんです。
乱暴されかけました…今も私の家にいるかもしれない。困りました。実家は遠くて。なんとか元カレを説得出来ればいいんですが」
デレクは腕組みをして目を瞑った。私の話になんの反応もない。
あれ?寝ちゃった?
そういえばこの車どこに向かって走ってるの?
「ナカムラ、都心へ向かってくれ。その前にミス・ヒムラ、君のアパートへ寄ろう」
デレクがドライバーに指示を出したあと、私にウインクしてみせた。
「かしこまりました」
白いグローブをはめたドライバーが恭しく返事をする。
「しばらく君はアパートを離れた方がいい。ナカムラが君のボディガードをするから着替えと貴重品をパッキングしてきなさい」
「はい…」
デレクの言葉を完全に理解出来ないまま、それでも身を委ねよう、と思ったのはあまりにもシートの座り心地が良かったからかもしれない。
「ミス・ヒムラ!もうすぐ着くよ。起きなさい」
誰かに優しく肩を揺らされて、私はハッと目を覚ました。
反射的にじゅるっと口の端にたまったヨダレを手の甲で拭う。
横目でちらりと見ると、デレクが唇の両端を持ち上げるようにして微笑んでいた。