苦手だけど、好きにならずにいられない!


「何か問題がありますか?」

私が訊くと、ナオミは両方の手のひらで左右に宙を切った。


「おおありよ!メイクが最悪!
セルフなのか知らないけど、あれじゃ死人のウエディングよ。花嫁はこの上なくハッピーな存在なのよ⁈

莉子、あなた、あの子のメイクやり直してちょうだい!今すぐにね」

「あ、はい!」


ナオミの剣幕に怯えて小ちゃくなっているビッキーの手を引っ張って教会の控え室に向かう。私も頭がパニックだ。花嫁のハッピーメイクって何?


「寺島先輩、タブレット貸して下さい!花嫁のメイク検索したいので!」

ビッキーは目鼻立ちがハッキリしてるから濃い色を使うとキツイ感じになってしまう。アイラインを薄くして、目元にふんわりオレンジのアイシャドウを入れる。
チークはさらに濃くして、仕上げにパール粉入りプレストパウダーを念入りに叩いた。


画像を見ながらの我流メイクだったけど、なかなか上手くいった。目元をあえてぼやかすことで初々しさが強調されて、ビッキーは喜びに溢れた花嫁になれたのだ。
ナオミも気に入ってくれた。


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