【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-



「案外良さそーな奴らで安心したわ」



ファミレス前でみんなと別れて、夕李とショッピングモールへ向かう途中。

自転車を押す彼の隣に並んでいたら、そう言ってくれるから「よかった」と思わず本心がこぼれ落ちる。



「でもまあ……

意地張って、余裕ある彼氏面したけど」



「え?」



「いちいち説明しなくていいから、報告すればいいって言っただろ俺。

……普通に考えてそんなわけないのにな」



「………」



「お前の元カレに、ひのは俺のだって言いたくて。

……あんな言い方したけど、ぶっちゃけ心配に決まってんだろ?別の男の彼女のフリなんて」




あー、余裕ねーなー、と。

どこか感情を置き去りにしたような声に、言葉を呑み込む。……かっこよかったと伝えるのは、場違いで、彼を納得させる音にもならない。



「……あのさ、ひの」



「うん?」



「ちゃんと俺のこと、好きでいろよ」



何を言ってるのと笑い飛ばしてしまえるほど大人だったら、あなたにそんな顔をさせなくて済むのに。

……それほどに大人だったら、きっとこんな曖昧な決断すら下さなかったのだろうと思えば思うほど、感情が裂けそうで困る。



「……大丈夫。ちゃんと好きだから」



過去には初々しいカップルだと地元メンツで騒がれた。……けれどそこにあるのは、純粋さでもなんでもなく、わたしの劣化していく感情。

触れることさえ怯えるわたしのつぶやきは、何度思い返しても、彼への答えというよりは自分に言い聞かせているようだった。



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