【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-



ずるいと思わない?と貶すような問いかけにも万理が嫌な顔をしないのは、誰よりも自分の感情を強く自覚しているからこそ。

……否定はするけれど、万理のそういうところは嫌いじゃない。



「じゃあひのちゃんは、

自分の行動をぜんぶ正しいと思ってやってきた?」



「……そうよ。

だからわたしは、後悔なんて言葉を使いたくない」



焦がれて焦がれて、苦しくなるほどの思いを抱えてどうせ後悔するのならば、後悔しないように行動すればいいだけのこと。

……誰かのせいで後悔したのなら、後悔する自分よりも、相手に失礼だと思ってしまうから。



「……逃避行するつもりは本当にないよ。

ただ……ただ、俺は、」



「授業はじめるから席につけー」



……あと。あともうすこし。

そんなタイミングで教室に来た担任の先生に心の中でため息を吐いて、涼しい顔をしている隣の万理をちらりと盗み見る。




こうなればもう、簡単に口を割ってはくれない。

……もうすこしだけ、彼の気持ちをちゃんと聞いておきたかったんだけど、な。彼女と対面するとき、すこしでも気持ちを確かめておきたいから。



綺世を選ぶのか、敵である人を選ぶのか、それとも万理のように愛してくれる人を選ぶのか。

ちゃんと彼女の口から聞いて確かめたかったのだけれど、それぞれの感情もはっきり聞けない今、あまり容易なことは言えない。



「ひのさん……!おひさしぶりです!」



「お元気でしたか!?

中学生組と他校組はひのさんと学校ですら会えないんで今日来られるのすごく楽しみにしてたんですよー!」



「……わたしが今日どうしてここに来たのか、みんな知ってるのよね?

やたらテンション高くない……?」



考えたい時ほど、余計な感情や邪念が混ざってくるせいで、うまく答えを導き出せない。

いまにはじまったことじゃないとわかっているけど、それでもやっぱり慣れたくはないそれに薄いため息を吐いて、ひさしぶりのメンバーを見回した。



……懐かしい、な。

半年前までの記憶はまだ、わたしの中で鮮明に発色してる。色褪せることなんて、知らない。



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