【完】BLACK JOKER -元姫VS現姫-
いまならすべて正直に言ってしまえる気がする。
自転車を降りた時に渡してもらったバッグを膝に乗せて、チェーンに通してあるピンクゴールドの指輪を彼に見せた。
脳裏で、色違いのシルバーが鈍く光る。
……恋人でもない女に、フリといえど指輪を贈るだなんて、罪な男。
「ペアリング?」
「そう。フリをするためにお揃い買おうってなったんだけど、悩んだ末に……
色々あって、ペアリングに、なりました」
「なりました、じゃねーよ。
……なあ、確認するけどあいつお前のこと好きじゃねーんだよな?」
「うん」
「好きでもない女に、
嘘でもペアリングなんて贈るかしら」
がちゃり。
開いた扉から出てきた"アサギさん"は、扉越しでも声が聞こえたのか出てきて早々そう口にした。さっきと違って、長い髪が束ねられてる。
「サキさん、プライベートな会話に混ざらないであげてください」
「だって、かなちゃん考えてもみなさいよ?
どうでもいい女にペアリング渡したりする?」
「わたしはもらいましたよ。
これ以上ないぐらい女たらしな男から」
かなちゃんと呼ばれたその美人さんの左手薬指には、綺麗な指輪。
若く見えるけど、結婚してるの、かな。
「ああ、そうだった……
でも結果あいつと結婚したじゃない?」
「まあ、ペアリングくれた時はもう既にわたしにゾッコンだったらしいので、あれは好きな女に渡したペアリング、っていうカウントですね。
……あ、サキさんすみません、わたし幼稚園にお迎え行ってきます」