課長の胃袋をつかみました
5.お弁当大作戦
次の日、課長は普通に出勤していた。
昨日までシンガポールじゃなかったか?
1日で戻れるものなの?

そんな疑問はあったものの、一応お弁当は持参していた。
今更1人ぶん増えたところであまり差はない。

先輩との約束通り、私は朝からタイミングをうかがっていた。
課長がそれとなく休憩に行くタイミングを狙う。
しかし課長は常に来客やら会議やらでフリーの時間がない!!

「というわけで初日はあえなく失敗いたしました。」

昼休みを迎え、昨日と同じ公園で先輩にお弁当を渡した。
結局課長はあれから自分のデスクに戻らなかったのだ。

「あー、残念だったね。まあ俺は美味しいお弁当にありつけたからいいけどね〜。」

そう言って先輩はお弁当箱を開けた。

「お、唐揚げ。いいね〜大好物。」

そう言って幸せそうに頬張っている。
私はその姿を見て幸せな気持ちになった。

先輩だって同じように美味しいって喜んでくれるじゃないか。
もとから課長より塚田先輩の方が好きだななんて思っていたのだから、この状況って結構美味しいんじゃないの?

そんなことを考えてみるものの、やはり気持ちはなんだか晴れない。

課長とはたった1日デートしただけなのに。
やはりそれほどまでにキスの威力は大きかったということが。
ファーストキスでもあるまいに。

そんなことをぶつくさ考えながら、私はお弁当を片付けた。

休憩時間も終わりに近づいてきたため会社に戻ろうとしたが、やはり先輩と2人きりで戻るのはなんとなく気が引けた。

公園なんかでお昼を食べるOLはそうそういないし会社からは少し離れているということもあって、公園で目撃される可能性は無いけれど、会社近くでは確実にあらぬ噂を立てられる。

よって大した用事はないが、コンビニに寄ると言って先輩とは一足先に別れた。
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